「その頃、日本中の町という町、家という家では、二人以上の人が顔を合わせさえすれば、まるでお天?の??でもするように、『新世紀エヴァンゲリオン』の?をしていました」と書くと、まるで有名探偵小?の出だしのようだが、1996年に於いて、僕の周?はそんな感じだった。?鳥屋で呑んでいれば隣でサラリ?マンが人類補完計?を語り、?生時代の友人と久し振りに?えば死海文書について訊かれる。あるアニメ監督に仕事絡みで呼び出され、用件が?んだところで彼は「で、『エヴァンゲリオン』についてなんだけどね」と?顔で話し始めた。彼は仕事の用件は二の次で『エヴァ』について話したくて、僕と?おうとしたのかもしれない。世は正に『エヴァ』ブ?ム。一時期は、本屋に行く度に、新しい謎本が店頭に出ていたくらいだ。

　ＴＶシリ?ズの放映が終了したのが1996年３月。翌４月には「第?拾伍話　終わる世界」、「最終話　世界の中心でアイを叫んだけもの」を?初の脚本に沿ったかたちで作り直す事が?表され、次いで劇場版の製作が?表された。最初に劇場版製作が?表された段階では、それは第?拾伍話と最終話のリメイクとは別の完全新作オリジナルであると?明されていたのだ。結局、完全新作の『エヴァ』劇場版は造られなかったわけだが、もし造られていたらどんなものになっていたのか、是非知りたいものだ。
　「シト新生」とも呼?されている最初の劇場版。それを僕は「EVANGELION DEATH AND REBIRTH」、あるいは??に「春エヴァ」と呼んでいる。ＴＶシリ?ズ終了から「春エヴァ」公開までの１年間が、前述した『エヴァ』人?が最も加熱した時期だった。この時期、僕の『エヴァ』との?わり方は、より一層深くなっていった。それまでもアニメ?誌の記事で構成を??し、ＬＤ＆ビデオのパッケ?ジの編集をしていたのだが、「春エヴァ」と「夏エヴァ」ではそれに加えて、プレスシ?ト、劇場?りのパンフレット、前?り券、新聞?告といった宣?周りの各種印刷物のディレクションを??させていただいた。僕の中で『エヴァ』とのシンクロ率がＭＡＸまで高まっていた時期だ。?時、自分が書いた原稿を見ると、?負い過ぎているのがよく分かる。ディレクションと云っても、僕がやったのはデザインのアイディア出しとテキストであり、?際のデザインは後に色?なアニメ?連のパッケ?ジデザインを手がける根津典彦さんの仕事だ。劇場版『エヴァ』には宣?協力の役職で、僕の?社であるスタジオ雄がクレジットされている。それは誇らしい事だと思っている。「春エヴァ」の劇場?りパンフレットは、500円と1000円の２バ?ジョンを造った。1000円バ?ジョンは、渾身の仕事だった。根津さんのデザインも炸裂している。「春エヴァ」の公開初日、２日目では入場者?よりも?れたパンフレットの?の方が多かったのだそうだ。２冊買った人が多かったのだろう。

　「春エヴァ」のパンフレットの?に?係者に取材をしている時には、まだ春に第26話までが公開される予定だった。貞本義行のインタビュ?で「第26話　まごころを、君に」についての話題が出ているのはその?だ。第26話が間に合わないらしい事が分かった時、たまたま僕はGAINAXにいた。その時の緊張感はよく?えている。劇場版は、ＴＶシリ?ズの再編集版である「DEATH」と、リメイク版第25話、第26話で構成されるはずだったが予定は?更され、「DEATH」と第25話の途中までが「春エヴァ」となった。
　「DEATH」は構成を薩川昭夫が??し、監督を摩砂雪が務めた。少年達が?育館で演奏するイメ?ジシ?ンも、話?に沿って場面を?いでいくのではなく映像と台詞をシャッフルしていくという構成も、薩川さんのアイディアだ。?育館の演奏シ?ン以外にも新作映像はある。ＴＶシリ?ズのカットを作?し直したものと、後にリリ?スされる第?拾?話から第?拾四話で新作パ?トとして追加する?に制作されていたものだ。構成も編集も見事。第?話の明るく快活なミサトの映像に、第?拾伍話での彼女の葛藤についてのモノロ?グを被せるといった意地?さ、あるいは次?と繰り出される極太明朝のテロップのメリハリの?さも、?に『エヴァ』らしい。「DEATH」は物語やキャラクタ?を分かり易く紹介するものではない。設定や話は分からなくてもいい。『エヴァ』というフィルムが持っていた?分を?えたい。そんな作品だった。「第拾四話　ゼ?レ、魂の座」パワ?アップ版の印象もある。「DEATH」は後に編集に手が入れられて「DEATH(TRUE)」となり、更に手が入れられて「DEATH(TRUE)^2」（^2は階?記?）となった。摩砂雪監督が最初にイメ?ジしていたのが「DEATH(TRUE)」であり、「DEATH(TRUE)^2」なのだ。少しずつ人格（と?）の違ったアスカが次?と登場する場面は、最初の「DEATH」にしかない。劇場であの場面を?た時には、本?に?夢の?だと思った。それは「DEATH」というフィルムの印象を決定づけるものだった。自宅のモニタ?で同じ場面を?ても、あの感?は感じられない。?客が緊張を?いられる劇場ならではものなのだ。作り手にとっては冗長なシ?ンなのだろうが、あの場面が存在するのが僕にとっての「DEATH」だ。

　第25話の途中までの?容である「REBIRTH」は、量産型のＥＶＡシリ?ズが飛?したところで終わる。復活したアスカ。?略自衛隊を蹴散らす??機。そして、そこにＥＶＡシリ?ズが飛?したところで、エンディング曲の「魂のルフラン」が始まる。ええっ！　ここで終わっちゃうの!?　僕なんか第25話のコンテをすでに?んでいて、どのカットで終わるのかまで知っていて、それでも「ここで終わるのか!?」と思った。「ＥＶＡシリ?ズ？　完成していたの!?」というアスカの台詞に「完成しとらんやんけ！」と心の中で突っ?んだ。「次はいったいどうなるの？」という期待感も『エヴァ』の魅力であった。ＴＶシリ?ズ最終回でもお預けを?ったが、「REBIRTH」のラストもそれに匹敵する位に期待を煽るものだった。
　『エヴァ』というフィルムが持つ?分を充分に表現した「DEATH」、期待を煽りまくった「REBIRTH」。「EVANGELION DEATH AND REBIRTH」は?に『エヴァ』らしい作品だった。「魂のルフラン」が始まった瞬間に、『エヴァ』というタイトルの魅力が最も高まったのかもしれない。


［主な?連記事］
【DATA BASE】『新世紀　エヴァンゲリオン』（ＴＶシリ?ズ）(06.05.11)
【DATA BASE】『新世紀エヴァンゲリオン劇場版［シト新生］』(06.05.12)
【DATA BASE】『新世紀エヴァンゲリオン劇場版　THE END　OF　EVANGELION』(06.05.15)

［ＤＶＤ情報］ 「THE FEATURE FILM　NEON GENESIS EVANGELION」（『DEATH(TRUE)^2』と「第25話　Air」「第26話　まごころを、君に」を??） ??元：キングレコ?ド ［Amazon］