女性の俳優。現在は演劇だけでなく、映?、ラジオ、テレビの女性演技者をも含めて幅?く使われている。演劇の起源を、生活ないしは生産??と結び付く神事、呪術(じゅじゅつ)と?係づけて考えるならば、洋の東西を問わず、古代の巫女(みこ)的役割を女優の原初的形態とみることができる。しかし、古代ギリシア劇の時代からルネサンス期にかけての西?演劇や、能狂言が成立する室町期の日本演劇において、女優の存在は公認されず、主として男性俳優中心に演劇は成立していた。そこには女性の社?的、宗?的地位の低さが?係していたと思われる。

　ルネサンスの洗?をいち早く受けたイタリアの?興?面喜劇コメディア?デラルテにおける女優の登場を先?とし、フランスの古典主義演劇をはじめ、女性役を女性演技者が演じてこそ??であるとする合理的精神が?まるにつれ、女優という職能が確立されていった。しかし、エリザベス朝のイギリス演劇においては、女性の役は少年が演じていた。そして近代初頭には、フランスのサラ?ベルナ?ル、イギリスのシドンズ夫人、エレン?テリ?、イタリアのエレオノ?ラ?ドゥ?ゼらの名女優が各?に登場し、女優が職業としても社?的に確立して現在に至っている。

　日本では白拍子(しらびょうし)、女曲舞(くせまい)、女猿?(さるがく)、女田?(でんがく)など庶民的?芸のなかで、女芸人の存在はあった。そして1603年（慶長8）京都に進出し、歌舞伎(かぶき)の祖とされる出雲(いずも)の阿?(おくに)の出現は、この女芸人の系譜の社?的突出とすることができる。しかし阿?的な遊女歌舞伎は1629年（?永6）に禁止され、以後の歌舞伎には女方(おんながた)という?特な演技術が男優によってつくりだされ、女優的役割は遊女や芸者の世界に閉じ?められた。しかし明治以降の近代化に伴い、女優の必要が叫ばれ、新派劇に川上貞奴(さだやっこ)らの芸者出身の女優が登場し、女優養成も行われた。なお日本の公認の舞台に初めて女優が登場したのは、1891年（明治24）11月、東京??草吾妻座(あづまざ)での伊井蓉峰(ようほう)ら新派劇の?美館(せいびかん)公演『政?美談淑女之操(せいとうびだんしゅくじょのみさお)』における千?米坡(ちとせべいは)であるが、名?ともに日本近代女優の第一?といえるのは、文芸協?で養成され、1911年（明治44）に『人形の家』のノラを演じた松井須磨子(すまこ)であろう。以後、築地(つきじ)小劇場時代に田村秋子、山本安英(やすえ)、東山千?子(ちえこ)、杉村春子らの女優が輩出し、新派には水谷八重子らが登場する。日本の近代女優の?みは日本の女性解放運動の?史と重なり合うといえよう。

［石澤秀二］