平行

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平行な直線と曲線

初等幾何? 、特に ユ?クリッド幾何? における 平行性 (へいこうせい、 : parallelism )は、 ユ?クリッド平面 上の 直線 が互いに交わらないという ?係性 を抽象化するものである。 三次元空間 において、直線と平面や平面同士についても共有点がないことを以って平行性を考えることができる。ただし、三次元空間?の直線同士の場合には、それらが互いに平行となるためには 共面性 (それらが同一平面上にあること)を要請しなければならない(交わらない二直線は、それらが同一平面上にないならば ねじれの位置 にあるという)。

平行線は ユ?クリッド原論 における 平行線公準 の主?象である [注? 1] 。 平行性は第一義には アフィン幾何? の性質の一つであり、 ユ?クリッド幾何? はその種の幾何?の特別な?例である。その他の幾何?においては、例えば ?曲幾何? などでは、同?の(しかしまったく同じではない)特定の性質を?たすことを「平行」と言い表す。

以下、特に言及のない限り、主にユ?クリッド幾何?における平行性について述べる。

?史 [ 編集 ]

平面上の互いに交わらない直線の?としての平行線の定義は 『原論』 第 I ?の定義 23 に現れている [1] 。古代ギリシア人は、おもに 平行線公準 を?明しようと試みる中で、もっと別の平行線の定義についても議論している。 プロクルス は等距離直線としての平行線の定義は ポセイドニオス に?するとし、同じ脈絡において ゲミノス を引用している。 シンプリキオス もポセイドニオスの定義に言及し、アガニスによるその修正についても述べている [1]

19世紀の終わりごろ、イングランドにおいて『原論』はいまだ中?校における標準的な?科書であった。新たな 射影幾何? および 非ユ?クリッド幾何? の勃興により、??からの幾何?の取り扱いは?化を余儀なくされており、このころいくつか新しい幾何?の?科書が書かれている。これら新興の?科書における主要な相違点は—それら新興?科書の間でも、またそれらと原論との間でも—平行線の取り扱いが異なることである [2] 。これらの改革的な?科書に批判的な人物がいないはずはなく、そのうちの一人としてチャ?ルズ?ドッジソン( ルイス?キャロル として知られる)は?曲 Euclid and His Modern Rivals (『ユ?クリッドと彼の現代のライバルたち』)を書き、それらテキストを扱き下ろした [3]

初期の改革的?科書の一つが、 ジェ?ムス?ウィルソン?モリス 英語版 1868年 の著書 Elementary Geometry [4] (「初等幾何?」)である。ウィルソンは自身の「方向」(direction) という 原始?念 英語版 に依?した平行線の定義に基づいていた。 ヴィルヘルム?キリング 英語版 に?えば [5] 、この考え方は ライプニッツ にまで遡れる [6] 。ウィルソンは、原始?念として未定義のまま「方向」という言葉をほかの定義で用いており、例えば6番目の定義は「互いに交わる二つの直線はそれぞれ異なる方向を持ち、それら方向の差はそれらの間の「角」である」のように述べている [7] 。定義 15 において平行線は以下のように導入される:「同じ向きを持つが一つの同じ直線の部分となっていない直線を平行線と呼ぶ」 [8] オ?ガスタス?ド?モルガン はこの?科書を批評して、主にこの定義およびウィルソンが平行線に?する?容を?明するのに用いた方法に基づいて誤りであると?じた。ドッジソンもまた、ウィルソンによる平行線の取り扱いを非難するために、彼の?曲の大部分を?てている (Act II, Scene VI § 1)。ウィルソンは自身の?科書の第三版以降、これを改めている [9]

他の改革者たちによって提案された、平行線の定義の置き換えとして用いられた他の性質も、大きく優れるものはなかった。主な難点は、ドッジソンの指摘したように、それらを用いるために系に余計な公理を追加する必要があったことである。ポセイドニウスの等距離直線としての定義は、Francis Cuthbertson が1874年の著書 Euclidean Geometry で解?したように、直線の片側に?えられた一定の距離に位置する点の全?が直線を成すことを示さなければならないという問題から逃れられない。これは?明できることではなく、それが?であるというのは改めて公理として要請しなければならないのである [10] 。??線による同位角の性質を用いた定義は W. D. Cooley が1860年の著書 The Elements of Geometry, simplified and explained で用いたが、この性質を利用するには「一つの直線が直線の?に??的に交わるとき同位角が合同となるならば、任意の??線においてもそうでなければならない」という主張の?明が求められ、その正?化にはやはり新たな公理が必要であった。

平面幾何 [ 編集 ]

平行?件 [ 編集 ]

As shown by the tick marks, lines a and b are parallel. This can be proved because the transversal t produces congruent corresponding angles , shown here both to the right of the transversal, one above and adjacent to line a and the other above and adjacent to line b .

ユ?クリッド空間 ?の互いに平行な直線 l, m に?し、以下の性質は互いに同値である:

  1. 互いに一? 等距離 英語版 : 直線 m 上の点は、直線 l との(最短)距離がどの点においても同一の値を持つ
  2. 直線 m は直線 l と同一平面上にあるが、 l とは交わらない(ここで、直線とは何れの方向にも無限に伸びているものを言うことに注意)
  3. 二直線 m, l がともに同一平面上にある第三の直線( ??線 英語版 )と交わるとき、それらが??線との交わりで生じる 同位角 が互いに 合同 である。

これらの性質は互いに同値であるから、これらのうち任意の一つをユ?クリッド空間における平行線の定義として採用することができるが、最初と最後のものは長さや角度を測ったりする操作が含まれ、そのぶん?ん中の性質よりは複?になっている。そこで、?ん中の性質をユ?クリッド空間における平行性の定義に採用するのが普通である [11] 。そしてほかのふたつの性質は平行線の公理からの?結ということになる。ほかにも、 傾き を測る操作を含めれば、直線が互いに平行ということをそれらの傾きが同じであることによって定義することができる。

作? [ 編集 ]

上記の三性質からは三種類のそれぞれ異なる平行線の作?法が?えられる [注? 2]

問題
a を通り、直線 l に平行な直線を引くこと
問題: 点 a を通り、直線 l に平行な直線を引くこと
問題: 点 a を通り、直線 l に平行な直線を引くこと
作?法

平行線の間の距離 [ 編集 ]

ユ?クリッド平面?の平行線は 等距離 英語版 だから、平行な二直線間の距離は一意に決まる。軸に平行でない平行二直線の方程式を

としてこれらに直線の間の距離は、これら平行線の共通垂線との交点となる二点の位置を決定し、それらの間の距離を測れば求められる。共通の傾きを m としたから、共通垂線の傾きは −1/ m であり、用いる垂線は何でもよいので、 y = − x / m を用いることにすれば、二つの交点は と求まる(ただし、この交点の座標は m = 0 でも有?)から、これら二点間の距離
が得られる。

同?に、直線を一般形の方程式

で?えたときのそれらの間の距離は
と書ける。

空間幾何 [ 編集 ]

空間直線同士の場合
同一の三次元空間?にある二直線が互いに交わらないとき、それらは平行とは限らない。それらが平行となるのは、それらが 同一平面上にある 場合に限る。そうでないとき、それらは ねじれの位置 にある。
三次元空間?の相異なる直線 l, m が平行となるための 必要十分?件 は、 m 上の点 P から測った l 上の最も近い点への距離が、 P のとり方に依らないことである。これはねじれの位置にある場合には絶?に成り立たない。
直線と平面の場合
同じ三次元空間?にある直線 m と平面 q で、 m が平面 q 上にないとき、それらが平行となる必要十分?件は、それらが交わらないことである。
もちろん、それらが平行であるための必要十分?件を、 m 上の任意の点 P から測った q 上の最も近い点への距離が P の位置のとり方に依らないことと述べることもできる。
平面同士の場合
「互いに平行となる必要十分?件がそれらが共有点を持たないことである」という同一平面上の平行線に?すると同?の事?が、同一三次元空間?の平行面に?しても成立する。
また、同一三次元空間?の相異なる二つの平面 q, r が平行となる必要十分?件は、平面 q 上の点 P から平面 r 上の最も近い点へ測った距離が P の位置の選び方に依らないことである。このことは、より高次の空間?で考える場合には、同一三次元空間?にない二つの平面では成り立たない。

反射的な平行性 [ 編集 ]

綜合的 アフィン幾何? において、直線が互いに平行であるという?係は、ユ?クリッド幾何?における用法からやや修正した基本?念である。平行性が ?? かつ 推移的 ?係 であることは明らかであり、それが 反射的 ならば 同値?係 が定まる。ふつう、ユ?クリッド幾何?において直線は自分自身と平行とは考えないが、アフィン幾何?においては自分自身と平行(したがって同値?係を成す)と考える [12] :192 [13] :17 のが便利である。

この種の平行?係を記述する別の方法は、 交わり 一点 でない交線も考えることである。すなわち、二つの直線が互いに平行とは、それらの全ての点が共通点であるか、さもなくば共有点が一つもないこととする。このことは、アフィン幾何?およびユ?クリッド幾何?で用いられる プレイフェアの公理 では、平行?係が平面上の直線全?の成す集合上の推移的?係を成すという主張に同値であるとの注意がある [14] :372

非ユ?クリッド幾何における平行性 [ 編集 ]

非ユ?クリッド幾何? においては、直線の代わりに 測地線 に?して述べるのがより一般的で、測地線の意味で「直線」の語がしばしば用いられる。測地線とはすなわち?えられた幾何における二点間の最短?路を意味する。 楕円幾何 ?曲幾何 では、 上で述べた三性質 は互いに同値ではなく、特に長さや角度を測る操作を含まないものだけが非ユ?クリッド幾何においても有?である。三性質は、このような一般の幾何においては、それぞれ 等距離を保つ曲線 ( equidistant curves ), 互いに平行な測地線 ( parallel geodesics ), 共通垂線を持つ測地線 ( geodesics sharing a common perpendicular ) という異なる種類の?係を定める。

?曲幾何 [ 編集 ]

ユ?クリッド幾何?において二つの測地線(直線)は交わるか平行の二?しかないが、?曲幾何?では選?肢は三つある。すなわち、同一平面上にある二つの測地線は:

  1. 交わる : その平面?の一つの共有点でそれらは交わる;
  2. 平行 : 平面?では交点を持たないが、共通の無限遠点に?束する(無限遠点で交わる);
  3. 超平行 : 極限において共通の無限遠点を持たない

文?によっては「超平行」( ultra parallel ) な測地線は「交わらない」という言い方もしばしば用いられる。「無限遠点で交わる」測地線は 漸近的平行線 英語版 ともいう。

直線 l 上にない点 a を通る漸近的平行線は二つ存在し、それぞれ l の各方向における 理想点(無限遠点) 英語版 に??している。この二つの直線は、 l に交わる直線と、 l に超平行な直線とを隔てる境界線になっている。

超平行線は共通垂線をただ一つ持ち( 超平行定理 英語版 )、この共通垂線の?側で?散する。

楕円幾何 [ 編集 ]

球面幾何 における測地線は 大円 であり、大円は球面を二つの等しい半球面に分割、またどの二つの大円も互いに交わる。したがって、?えられた測地線に平行は測地線は存在せず、すべて交わる測地線に分類される。球面上の互いに距離を保つ曲線を 平行緯線 ( parallels of latitude ) と呼ぶ。互いに平行な緯線は、球面の中心を通る平面に平行な平面とその球面との交わりによって生成される。

?連項目 [ 編集 ]

[ 編集 ]

注? [ 編集 ]

  1. ^ 平行線公準は直線が互いに交わる場合のみ言及しているけれども、それは プレイフェアの公理 の意味での平行線の一意性を示すことが必要な?容である
  2. ^ 三番目のみが 定木とコンパスを用いた作? であり、前二つは「無限回の手順」を要する無限作?になる

出典 [ 編集 ]

  1. ^ a b Heath 1956 , pp. 190?194.
  2. ^ Richards 1988 , pp. 161?200, Chap. 4: Euclid and the English Schoolchild..
  3. ^ Carroll, Lewis (2009) [1879], Euclid and His Modern Rivals , Barnes & Noble, ISBN   978-1-4351-2348-9  
  4. ^ Wilson 1868 .
  5. ^ Einfuhrung in die Grundlagen der Geometrie, I , p. 5
  6. ^ Heath 1956 , p. 194.
  7. ^ Wilson 1868 , p. 2.
  8. ^ Wilson 1868 , p. 12.
  9. ^ Richards 1988 , pp. 180?184.
  10. ^ Heath 1956 .
  11. ^ Wylie, Jr. 1964 , pp. 92?94.
  12. ^ Coxeter, H. S. M. (1961), Introduction to Geometry , John Wiley & Sons  
  13. ^ Szmielew, Wanda (1983), From Affine to Euclidean Geometry , D. Reidel, ISBN   90-277-1243-3  
  14. ^ Liu, Andy (2011), “Is parallelism an equivalence relation?”, The College Mathematics Journal 42 (5)  

?考文? [ 編集 ]

  • Heath, Thomas L. (1956), The Thirteen Books of Euclid's Elements (2nd ed. [Facsimile. Original publication: Cambridge University Press, 1925] ed.), New York: Dover Publications  
(3 vols.): ISBN   0-486-60088-2 (vol. 1), ISBN   0-486-60089-0 (vol. 2), ISBN   0-486-60090-4 (vol. 3). Heath's authoritative translation plus extensive historical research and detailed commentary throughout the text.
  • Richards, Joan L. (1988), Mathematical Visions: The Pursuit of Geometry in Victorian England , Boston: Academic Press, ISBN   0-12-587445-6  
  • Wilson, James Maurice (1868), Elementary Geometry (1st ed.), London: Macmillan and Co.  
  • Wylie, Jr., C.R. (1964), Foundations of Geometry , McGraw?Hill  

?連文? [ 編集 ]

  • Papadopoulos, Athanase; Theret, Guillaume (2014), La theorie des paralleles de Johann Heinrich Lambert : Presentation, traduction et commentaires , Paris: Collection Sciences dans l'histoire, Librairie Albert Blanchard, ISBN   978-2-85367-266-5  

外部リンク [ 編集 ]