『ディストラクション?ベイビ?ズ』&『ヒメアノ~ル』、門間雄介が“ヤバい映?”を分析

門間雄介が“ヤバい”映画を分析

 ?利子哲也監督、柳?優?主演『ディストラクション?ベイビ?ズ』が絶?されている。

「面白い映?ができました」

 試?の前、?利子監督はニコニコしながら言った。「ぜひ?しんでください」。でもこれは「面白かった」とか「?しかった」とか、そういったシンプルな感想とは最も?遠い作品だろう、多くの人にとって。

 確たる理由もなく人に?りかかり、伸されてもまた這いあがる?のような男。柳?扮する主人公の泰良はそういった男だ。彼のその野?な力に、ある者は?弄され、ある者は惹きつけられ、またある者は恐れを抱く。あたかも暴力そのもの、暴力の化身のような泰良は、?る人に『ダ?クナイト』のジョ?カ?や『ノ?カントリ?』のアントン?シガ?を想起させるかもしれない。でもジョ?カ?やシガ?が凶行の果てに快?を見出すのと違い、泰良はただ反射的に、膝を叩けば足がピョンと跳ねあがるような無意識の反?として、ひたすらに凶行をくり返す。だからそこには、善も?も、快?の欠片すらもない。あるのは混じりけのない純?な暴力だけだ。

 そんな抽象的で象?的なキャラクタ?を、柳?は限りなく透明で、限りなく血なまぐさい存在として演じている。あ、野?だ。その動物的な芝居に思わず目をみはる。彼のフィルモグラフィ?を振りかえるとき、カンヌ?際映?祭で男優賞を受賞した『誰も知らない』以上に、ある意味重要な意味合いを持つのが『許されざる者』だ。「誰?」。彼を?ても、はじめは彼だとわからなかった。クリント?イ?ストウッド監督の西部劇を、明治時代初期の蝦夷地に移し替えたこの作品で、彼が扮したのは和人の血を引くアイヌの?年。その野性味あふれるたたずまいには、かつてのあどけない面影どころか、スマホを眺め、カフェにたむろするような現代人の痕跡すら微塵もない。これは憑依か投影か、いったいなんなのか。『誰も知らない』は俳優=柳?優?を産み落とした記念すべき作品だが、そのポテンシャルを本格的に開花させたのは『許されざる者』だ。『ディストラクション?ベイビ?ズ』はそんな彼の才能が隅?まで目いっぱい解き放たれた作品になった。

 インディペンデントの奇才として、その商業映?デビュ?が長く長く待望されてきた?利子にとっても、もちろんこの作品はブレイクスル?の一作になるだろう。力の暴?を描く映?はこれまでにもたくさん存在した。でもほとんど言葉を?することなく、心のうちをさらけ出すこともない、なおかつ作品のラストまで役名が明かされないキャラクタ?を主人公に据えたことで、?利子は現代的な暴力の匿名性や?散性に言及する。作品の冒頭、主人公の背後に寄り添うカメラが、このキャラクタ?の視点と?る人の視点を重ねて提示するのは、彼はあなたであり僕でもあり、あるいは何者でもないのかもしれないというリアリティ?だ。泰良の暴力が菅田?暉扮する高校生の裕也、小松菜奈扮するキャバ?の那奈に感染し、しまいには村上虹?扮する弟の?太をも取り?もうとするのも、また泰良の暴行がSNSによってシェアされたりリツイ?トされたりしていくのも、もともと彼の記名性を?く持つはずの行?が、?散し、やがて名無しの誰かの暴力に?質していくさまをとらえている。そんな自爆テロやメディアリンチにも通じる性質を長い射程に?めた?利子の嗅?。卓越している。

 菅田、小松、村上、それから池松?亮といった?に引く手あまたのキャストに加え、北村匠海、岡山天音、吉村界人ら、?係者が一?に注視する20代前半から10代後半の俳優を起用し、一定の期間、彼らを地方ロケのために拘束しているのも、考えてみればすごいことだ。

「オリジナル脚本、地方が舞台、このテ?マ……プロデュ?サ?が嫌がることを商業デビュ?作で全部やっている」

 そんなことをぶつくさ言いながら、なぜかうれしそうだった表情が忘れられない。撮影が終了して間もない頃の西ヶ谷?一プロデュ?サ?だ。?利子の中編『NINIFUNI』をプロデュ?スし、TVシリ?ズ『ノ?コン?キッド ~ぼくらのゲ?ム史~』『ディアスポリス -異邦警察-』でも?利子を監督のひとりに指名した彼が、確かな?係性を育み、昨今の日本映?ではなかなか成立しにくい企?を推し進めた。彼のプロデュ?ス作品には共通点がある。?永昌敬監督『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』、沖田修一監督『南極料理人』『?道世之介』、井口奈美監督『犬猫』『人のセックスを笑うな』、?手由貴子監督『グッド?ストライプス』。インディペンデントの才能に機?を?え、世に出し、その後へと至る道筋をどう付けるか。彼の?くプロデュ?ス作品は、『?道世之介』で脚本を務めた劇作家、前田司?の監督2作目『ふきげんな過去』だ。スタッフに?して付記するなら、同じく『ふきげんな過去』や『ディア?ディア?』で撮影を手掛ける佐?木靖之のカメラが、ある種のみずみずしさとともに登場人物らの破滅的と言っていい刹那を記?することに成功している。

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