?藤佑樹が、二軍であえいでいる。
練習試合も含めると4試合に登板し、4連敗。いまだ勝ち星がない。
しかし、?藤は、そもそも二軍で力を?揮するようなタイプではなかったのだ。
先日、春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督、西谷浩一が、?藤のことをこんな風に評していたことがある。2006年夏、大阪桐蔭は?藤を擁する早?と2回?でぶつかり、2-11で大敗している。
「彼のイメ?ジは、メキシコ出身の何十勝もしているような老獪なボクサ?。?そうじゃないんだけど、やってみるとうまさがわかる。こっちがパンチを打っても、その瞬間、ちょっと踏み?んだり、ちょっと引いたりして、相手の力を半減させる」
試合中、西谷はベンチの中で何度も「何で振らんねん!」と叫んでいたという。
「高校生レベルだったら配球はだいたい?める。だから、カウントを取りにくるボ?ルをねらっていた。でも、?化球がくるとわかっていて振りにいってるにもかかわらず、バットが出ない。選手に聞くと『ずらされてます……』って言うんです。おそらく、?藤君は相手の出方を見ながら、間合いをずらしていたんだと思います」
?藤はその頃、「相手が打ってくるかどうか、だいたいわかる」と話していた。そうして相手の?配を察知しながら、微妙に球速やコ?スを?えていた。
柔よく剛を制す――。それが?藤の持ち味だった。
己の力だけで?倒するような「地力」をつける時期がきた。
?打者になればなるほど相手の力を利用しつつ、ボ?ルの威力を倍?させる。そう、ボクシングで言うところのカウンタ?パンチのようなものだ。
ただし、「メキシコの老獪なボクサ?」は、相手が?者だからこそ?みを?揮するのであって、相手の力が落ちると往?にしてそれなりのボクシングしかできなくなってしまうものだ。つまり、?藤は、相手が一軍だったからこそ、通用したのではないか。二軍の打者と??したら、途端に二軍の投手になってしまう。
しかしもはや、そんな「テクニック」だけでは一軍でも通用しない――ということなのかもしれない。
プロで長くやるためには、相手の力を利用するだけでなく、己の力だけで?倒するような「地力」をつけなければならない時期にきているのだ。
【次ペ?ジ】 甲子園の決勝以上に鮮烈だった、西東京大?の決勝?。